文書作成日:2022/03/24

 2022年10月より、社会保険の被保険者となるパートタイマーやアルバイト等の範囲が段階的に拡大されます(社会保険の適用拡大)。そこで、この社会保険の適用拡大のスケジュールや被保険者となる要件、適用拡大までに対応が求められる実務について確認します。

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、役員や正社員が被保険者となる他、一定の要件を満たしたパートタイマーやアルバイト等(以下、まとめて「パートタイマー」という)も被保険者となります。このパートタイマーの社会保険への主な加入要件は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員(同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者)の4分の3以上であることとされています(4分の3基準)。
 また、この4分の3基準を満たさない場合であっても、従業員数501人以上の特定適用事業所や、従業員数500人以下で労使合意に基づき特定適用事業所と同様の加入要件を用いる任意特定適用事業所(以下、まとめて「特定適用事業所等」という)に勤務し、以下の4つの要件をすべて満たすパートタイマーは、短時間労働者として被保険者となります。
<短時間労働者の加入要件>

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が88,000円以上であること
  4. 学生でないこと

 この社会保険の加入要件に関して、今回、以下の2点について変更されます。
  1. 特定適用事業所の範囲の拡大
     2022年9月30日までは、従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が501人以上の事業所が特定適用事業所となっていますが、この基準が2022年10月1日から101人以上へ、2024年10月から51人以上へと拡大されます。例えば、正社員が80人、パートタイマーが60人(その内、厚生年金保険の被保険者は30人)の場合、厚生年金保険の被保険者数が110人となることから、この状況が継続すれば2022年10月1日から特定適用事業所となります。
  2. 加入要件の変更
     短時間労働者の加入要件は[1]のとおりですが、このうち2の「雇用期間が1年以上見込まれること」が、2022年10月から「雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること」に変更されます。これはすでに特定適用事業所等に該当している事業所にも適用されます。

 短時間労働者の加入要件は[1]の通りですが、この加入要件を満たしているかを判断する際によく問題となる「3」の賃金月額の考え方について整理しておきます。この賃金とは、週給、日給、時間給を月額に換算したものに、諸手当等を含めた所定内賃金により判断することになっています。この際、以下の賃金は除かれます。
[除外対象賃金]

  • 臨時に支払われる賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
  • 最低賃金法で算入しない賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
    通勤手当や家族手当は除外されるほか、所定内賃金により判断することになるため、割増賃金も除外して判断することになります。
 なお、短時間労働者に該当し、社会保険の標準報酬月額を決める際の対象となる賃金(報酬)は、従業員に支払われる賃金のうち、基本給のほか、役職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、勤務地手当、通勤手当、割増賃金等の現金で支払われるもののほか、現物で支給されるものも含まれます。短時間労働者の加入要件における賃金と、標準報酬月額を決める際の賃金が異なることを理解しておく必要があります。

 2022年10月から特定適用事業所に該当する事業所では、新たに被保険者となる短時間労働者の把握、パートタイマーへの説明、適用拡大以降の資格取得に係る手続きの準備を進めることになります。社会保険の適用拡大に関して、お困りごとがございましたら、当事務所までお問合せください。

■参考リンク
厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html/
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html/

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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